人間-自然関係の精神病理 その2
人間-自然関係の精神病理 その3
自閉症 (Autism)
神学者のトマス・ベリー (Thomas Berry)は、人間と自然との関係を自閉症という臨床心理メタファーを用いて論じている。ベリーいわく、自然世界との関係において
私たちは自閉的になってきている。地球、地形、大気現象や全ての命あるもの、山や渓谷、雨、風、惑星の全ての動植物が私たち語りかけていることに、もう耳を傾けていない。17世紀以来、ずっと私たちには聞こえていないし、自分たちに関する内なる世界を理解していない。私たちは外的な現象を体験している。内なる意味の世界に入り込めなくなっている。私たちにはその声が聞こえていない。1上記の「17世紀」とは、デカルトの機械論的世界観の創案を指している。「デカルトは…地球とその全ての生きものを殺した。彼にとって自然世界は機械だった。交感関係へと入り込む余地は無かった」。2
DSM-Ⅳ(精神疾患の分類と診断の手引 第4版)によると、自閉症とは、対人的相互反応における質的な障害、対人的または情緒的相互性の欠如、意思伝達の質的な障害、活動と興味の範囲の著しい限局性などを特徴とする広汎性発達障害である。人間は自らを理解することや、自らに関する事柄に取りつかれていて、地球や自然のプロセスを理解しようとしていない。自閉症児が母親の存在を見聞きしたり、感じたりしていないかのように見えるのと同様に、私たちはこの生きている惑星の超自然的存在が見えなくなり、地球の声や、工業化以前の社会で祖先が育んできた物語が聞こえなくなってきている、とメツナーは言う。この自閉的な状況は、ベリーによると、「人間と自然世界との相互存在の新たな様式」によってのみ治癒されうる。
〈註〉
1. Berry, The Ecozoic Era (Short piece)
2. Berry, 1991
〈参考文献〉
American Psychiatric Association (1994). Diagnostic and statistical manual of mental disorders (DSM-Ⅳ) 4th edition. Washington, D.C.: American Psychiatric Association.-高橋三郎・大野裕・染矢俊幸訳『DSM-IV 精神疾患の分類と診断の手引』(医学書院,1995)
Berry, Thomas (1991). "The Ecozoic era". Eleventh Annual E. F. Schumacher Lectures. Great Barrington Association, Mass.: E. F. Schumacher Society.
Berry, Thomas. The Ecozoic era (Short piece).
http://www.earth-community.org/images/The%20Ecozoic%20Era.pdf
Metzner, Ralph (1999). Green psychology: Transforming our relationship to the earth. Rochester, VT: Park Street Press.
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