人間-自然関係の精神病理 その2
人間-自然関係の精神病理 その3
人間-自然関係の精神病理 その4
嗜癖 (Addiction)
この40年間、科学者や専門家たちは、世界規模で展開する環境破壊の恐ろしく、心を硬直させるような状況を細部にいたるまで説明してきた。しかし、それでもなお、私たちが自殺的で環境破壊的行為を止めることができないのは、嗜癖 (addiction) や強迫行為 (compulsion) ―それが家族、仕事、社会的関係を壊すものだと知りつつも続けられる行為― の臨床定義と一致する。このメタファーは、大きなスケールで捉えると、苦悩や不満は全人間の避けられない特性であり、渇望や欲望が苦悩の根源であると説くアジアの霊性的伝統、特に仏教の教えにも相当する。
ディープエコロジストのラシャペル (Dolores LaChapelle) はこの嗜癖という概念を用い、金、銀、砂糖、薬物など依存性のある物質への飽くなき追求と、16世紀から現在に至る資本集約型工業社会の驚くべき成長との相関関係を分析している。ラシャペルいわく:
資本主義の発展全体は、人々の集団をある〈物質〉に依存させ、それを彼らに売りつけることによって成り立っている。私たちが安価な天然資源の膨大な産地を持つ限りにおいて、資本主義は〈機能していた〉。その〈嗜癖〉の歴史は続いているので、いまや資本主義は成長への燃料を補給するため、さらにも増して依存性薬物に頼っている。1もっと一般的に、消費主義の拡大や工業経済成長への強迫観念を嗜癖的社会の表れとして見ることもできる。心理学者のグレンディニング (Chellis Glendinning) は、現代の工業文明にみられるより速く、より強力な機械への強迫的な渇望を、「テクノ依存症 (techno-addiction)」と診断している。グレンディニングは、私たちの自然からの分離を「原初のトラウマ (original trauma)」であるとし、テクノ依存症は再びこのトラウマを負わせることになるという。2
メツナーは、この嗜癖モデルを非常に有用とみている。過去40年間、私たちは嗜癖に関する事象、その治療法や防止法を学んできた。例えば、「アルコホーリクス・アノニマス (AA)」で使用される「12のステップ」は、嗜癖のサイクルを絶ちたいと願う人にとって魅力あるものであり、また、スピリチュアルな価値観を人々に訴えるものである。
〈註〉
1.LaChapelle 1988, p.48
2.グレンディニングいわく、
私たちのようなテクノロジーに生きる人々が被るトラウマとは、自らの生活を自然界から、ざらざらした手触りの巻き蔓から、太陽と月のリズムから、熊や木々の精霊から、生命力そのものから、組織的、意図的に隔てることだ。それはまた、自らの生活を自然世界のリズムの中で生きていた私たちの祖先の社会的・文化的体験から、組織的、意図的に隔てることでもある。(1995, pp. 51-52)
〈参考文献〉
Glendinning, Chellis (1995). Technology, trauma, and the wild. In T. Roszak, M. Gomes, and A. Kanner (Eds.), Ecopsychology: Restoring the earth, healing the mind (pp.41-54). San Francisco: Sierra Club Books.
LaChapelle, Dolores (1988). Sacred land, sacred sex: Rapture of the deep. Durango, CO: Kivaki Press.
Metzner, Ralph (1999). Green psychology: Transforming our relationship to the earth. Rochester, VT: Park Street Press.
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